第3回 星の時間

地球には、奇跡としか思えない時間があります。

今回はそんなお話。

筆者は、中国古典、その中でも特に『孫子』に関する文章を書く機会が多いのですが、その著者である孫武は、紀元前490年後を中心に活躍していたことがわかっています(生没年不詳 関連する歴史的事件より)

では、同時代には誰がいるのか。中国では、まず孔子(前552〜前479)がいます。そして、伝説の上では老子も同時代人になると言われています(『史記」などの記述による、ただし異論多し)さらに西欧を見るとピタゴラス(前582〜前496)、ヘラクレイトス(前540〜前480ごろ)が完全な同時代人。そしてやや時代が下って、ソクラテス(前469〜前399)とヘロドトス(前485〜前420)もほぼ同時代人になります。 

もう一つインドを見ると、お釈迦様もほぼ同時代人(前460〜前383ないしは前560〜前480)

これは何を意味するのか、前500年前後におそらく生きていた人は、

孫武——戦略論の祖

孔子——儒教の祖

老子——老荘思想の祖

ピタゴラス——数学の祖

ヘラクレイトス——弁証法の祖(万物は流転するで有名)

釈迦——仏教の祖(第二の生誕説をとると)

前470年におそらく生きていた人は

孫武——戦略論の祖

孔子——儒教の祖

ソクラテス——ギリシャ哲学の祖

ヘロドトス——歴史の父

釈迦——仏教の祖(第一の生誕説をとると)

という、地球規模のとんでもないシンクロニシティが起こっているということなんです。しかも特筆すべきは、お互いの文明はそれぞれ独立して発展していて、文明自体お互いに交渉がほぼなく、当然お互いに知らなかったこと。

別に僕は矢追純一の信奉者でありませんが(子供の頃、黒いヘリコプターとキャトルなんたらは怖かったですが・笑)こりゃ宇宙人が地球に「頭の良くなるクスリ」でも撒いてくれて、知的ビックバンが起こってしまったとしか思えない奇跡が現出してしまっているのです。

実は、地球にはもう一回、これと同じような学術・芸術爆発の時期というのが訪れます。それが、先ほどの孫武と、ヨーロッパにおいて並び称されるクラウゼヴィッツという軍人さんの活動した時期。

羅列していくと、次のようになります。

ベートーヴェン1770年〜1827年——楽聖

モーツァルト1756年〜1791年——音楽史上最大の天才

葛飾北斎1760年〜1849年——浮世絵の代表的作家

与謝 蕪村1716年〜1784年——江戸俳諧中興の祖

小林一茶1763年〜1828年——江戸俳諧中興の祖

ターナー1775年〜1851年——英国最大の風景画家

ウィリアム・ブレイク1757年〜1827年——英国の詩人、画家

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン1732年〜1809年——交響曲の父

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ1749年〜1832年——ドイツロマン派の代表

アダム・スミス1723年〜1790年——経済学の父

イマヌエル・カント1724年〜1804年—ードイツ観念論の父

ジェレミ・ベンサム1748年〜1832年——功利主義の創始者

ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウス1777年〜1855年——現代数学の父

ナポレオン・ボナパルト1769年〜1821年——ヨーロッパの覇者

カール・フォン・クラウゼヴィッツ1780年〜1831年——西欧戦略論の父

これらの人は1780年から84年まで、全員同じ空気吸っていたことになるんですね。では、この二つの時期はなぜ生まれたのか、

時代状況等を考えますと、筆者が思い浮かべたのは次の二つの点。

「経済発展に裏打ちされた自由な言論、活動が許された階層の存在」

「異なる価値観のぶつかり合い」

前者でいえば、特に孫子や孔子、ソクラテス、釈迦が活躍した頃の地球って、大きな括りでいえば都市国家と、それによる貴族や浮遊民の文化が発達していました。自由な発想や言論と、それを支える経済的余裕。

これらが知的活動のベースになっていたわけです。1700年代日本の町民文化の興隆も、こちらのパターンに入るかもしれません。また、後者でいえば、カントやガウス、アダム・スミスが生きた時代というのは、まさしく1760年代のイギリス産業革命、1789年のフランス革命が起こった——新旧価値観のぶつかり合いが頻発した時期に当たります。この点では、古代中国においても「諸子百家」「百家争鳴」といった各思想家たちの自由な言論による学術の隆盛が起こったわけですが、「異なる価値観のぶつかり合い」がその発展を刺激した形になるんですね。

翻って現代、情報革命をもとにした「グローバリゼーション/ローカライゼーション」「産業資本主義/ポスト産業資本主義」など、異なる価値観のぶつかり合いには事欠かない現状があったりします。三度目の知的爆発が起こらないかな、と筆者などは期待してしまうのですが……

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